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Family Academy

スマホを手放せない子どもたち。悪者を演じてでも子どもの矢面に立つ気概を!

 内閣府の調査によれば、高校生のスマートフォン(以下、スマホ)所有率は平成22年度に3.9%だったものが平成25年度は82.8%に達し、スマホの急速な普及がうかがえます。これに伴い「いじめ」や「リベンジポルノ」、「ながらスマホ」による事故など多岐にわたる問題が深刻化しています。加えて、受験生をもつ保護者にとって一番の懸念は、子どもの「スマホ依存」ではないでしょうか? 最近の民間調査で1日のスマホの平均使用時間が男子高生は約4時間、女子高生はなんと7時間という結果が報告されました。竹内和雄先生は「実は子ども自身も“よくないことだ”と思っている。でも、手放せない。だからこそ、親子の会話によるスマホ使用のルールづくりが重要で、4月はその絶好の時期」とおっしゃいます。大学での学びや就活、社会人となってからもスマホは不可欠なツールです。スマホを「正しく怖がって、賢く使う」ために、親子でじっくりと話し合ってください。


竹内准教授

1964年生まれ。神戸大学教育学部卒、兵庫教育大学大学院修士課程修了。公立中学校で20年間、生徒指導主事などを担当し、寝屋川市教育指導主事を経て2012年より現職。生徒指導を専門とし、ネット問題、いじめ、不登校など課題を持つ子どもへの対応方法について研究している。文部科学省学校ネットパトロール調査研究協力者、総務省青少年インターネットWG構成員などを経て、総務省(近畿総合通信局)「スマートフォン時代に対応した青少年のインターネット利用に関する連絡会」座長をつとめる。著書に『家庭や学校で語り合うスマホ時代のリスクとスキル』(北大路書房)、『スマホチルドレン対応マニュアル 「依存」「炎上」これで防ぐ!』(中公新書ラクレ)などがある。
※所属、役職などはすべて取材時のものです。

「竹内、きしょい!」
(でも、ありがとう)

 私は「スマホチルドレン=スマホを手放すことが許されない子どもたち」について調査、研究を続けていますが、そのきっかけとなった10年ほど前の話から始めます。当時、中学校の教員で生徒指導主事だった私のところへ、「いやや!」と泣き叫ぶ中3の娘の手を引っ張りながら、お母さんが来られました。「この子、ケータイばっかりやって、ぜんぜん勉強しない。成績がガタ落ちで、このままでは志望校合格が危ない。竹内先生、12月の期末テストが終わるまでこの子のケータイ、預かってください」と握らされてしまいました。テストは1週間後から始まり、試験期間が終わるまで、彼女は廊下ですれ違うたびに私をにらみつけ、「竹内、※きしょい!」と言うのです。試験後、ケータイを返したときは本当にホッとしました。しかし、この話には続きがあります。1月、今度は彼女が一人で職員室に来て、「学年末テストが終わるまで、これ、預かって」とケータイを差し出すのです。前回はケータイがなくてゆっくり勉強ができたそうで、確かに成績も上がった。「今度もお母さんが無理やり預けたことにして。それと廊下で会ったら、また『きしょい』って言うから」と。実際、彼女は会うたびに「きしょい!」とにらみますが、毎回こっそりと振り返って目で感謝の合図を送ってくれました。
 もちろん子どもたちはケータイをいやいや使っているわけではありません。普段は楽しんでいます。けれど使いたくないときでも友達の手前、使い続けなくてはいけない場面も多々あり、「また、やってしまった」と実は反省もしています。ケータイが悪いのではなく、やむにやまれぬ事情で手放せない状態に陥っている場合もあるのです。問題なのはケータイではなく、子どもたちを取り巻く人間関係なのではないかということに気づかされました。さらに、その後日談。彼女は志望高校に受かり、その後も勉強に取り組み、難関大学に進学しました。「きしょい!」と言われ続けたことが少しは報われた思いです。
※「うざい」と似ており、心底腹が立っているというニュアンスがある大阪弁。

「ネットで知り合った人は信用できる」
(リアルの世界の子はわからない)

 ケータイが高機能なスマホとなり、「いじめ」や「依存」など10年前とは比較にならないほど深刻化、社会問題化しています。食事中も入浴中も、果てはベッドの中でもスマホを使い続ける子どもたち。なぜ、スマホを手放せないのか、手放すことが許されないのか。そんなにLINEが楽しいのか。まずは、子どもと大人ではリアルとバーチャルの感覚に大きな違いがあることを知っていただきたいと思います。
 現実世界、リアルな世界が大事だと考える大人にとって、TwitterやLINEはあくまでその補完材料です。しかし、一部の子どもたちにとっては逆で、LINEなどのコミュニケーションがメインで、リアルの会話はサブになってしまっていることさえあります。ある女子高校生に「LINEだと微妙なニュアンスが伝わらないので怖い。だから、LINEやネットとかで知り合った人と会ってはいけない」と言ったら、「えっ? クラスの隣の席の男の子はすぐ側にいるけど、心の中で何を考えているか、わからない。だけど、ネットで知り合った人とは文字で思っていることを伝え合うことができる。お互い、わかり合える。そっちの方が安心。私はリアルの方が怖い」。今度はこちらが「えっ」となってしまいました。彼女の将来が不安になり、ネット上での出会いがいかに怖いかという話を実例を交えてたくさん話したものの、まったく平行線で終わってしまいました。大人と子どもでは、リアルとバーチャルの感覚が違うんですね。私はアンケートやインタビューを通して年間1万人くらいの子どもたちについて調べているのですが、いまだに高校生の感覚を実感としては理解できていないかもしれません。彼らがネットの世界をリアルと同列に、もしくはそれ以上に扱い、大事にしているということはわかってきました。サブと考えている私たちの感覚でいきなり「スマホ禁止」と言っても、彼らにとってはメインなのでやめられません。また、中学生のときにいじめられたことのある子は、クラスのLINEを確認しないと落ち着かない。受験生であれば、勉強しないといけないという思いがあり、成績が上がらないとイライラする。ストレス発散ということでスマホのゲームをやって息抜きをしています。
 ネットにはまってしまう子は、リアル世界でうまくいっていないんですね。いじめられていたり、友人ができなかったり、勉強がうまくいかなかったりして、誰とでもいいからつながって安心したい。だから「感覚的に信用できる」スマホの先にいる人とネットでずっとやりとりする。それを「子どものため」という理由で親が頭ごなしに禁止してしまうと、子どもは「うわぁ!」と頭に血がのぼってしまい、暴力や犯罪に走ってしまう例もたくさん見てきました。

「LINEはやっぱり楽しい!」
(でも、たまに面倒くさい)

 最近の子どもたちは確かにスマホが手放せない。しかし一方で、大阪の高校生を対象にした私の調査によれば、LINEなどスマホ利用を「面倒くさいと思ったことがある」という回答が実に84.7%もありました。基本は楽しいけど、こっちが忙しいときでも連絡がくるから面倒くさい。相手は待ってくれない。返信しなかったり、チャットに加わらないと即座に「仲間はずれ」にされてしまう怖さもあります。受験生自身も、実は「このままじゃいけない」「勉強する時間をつくりたい」と思っています。でも、自分からクラスメイトやチャット仲間に言い出せないでいる場合が多いのです。
 ケータイやスマホがない時代、私たちは元旦に年賀状を確認するのが楽しみでした。「誰から来てるだろう?」「好きな子から来てるかな?」というワクワク感。子どもたちは毎日、そんな感じでスマホを手にしているのかもしれません。帰宅後の友人との会話は居間にある固定電話で、それもごくたまなこと、家族との会話も勉強する時間もありました。今の子どもたちは家へ帰ってもLINEでずっとつながっている。学校での関係が帰宅後も延々と続いているわけです。それはしんどい。お風呂でもトイレでも、寝る前でもずっと見ている子もいます。好きな子はチャットで何を話しているのかというワクワク感、返信しないと仲間はずれにされるという不安で、勉強する時間なんかつくれない。言い換えれば、受験生で成績が上がる子は、確実にスマホをシャットダウンできる方法を持っている子だとも考えられます。
 そうしたことを踏まえ、極端な提案かもしれませんが、一つの解決策として私は親が「きしょい!」と言われる存在になってもいいと考えます。そのためにまず、子どもときちんと向き合ってルールをつくり、破ったときのペナルティを決めておくべきでしょう。

「スマホは夜9時まで」
(やった、勝ち取った!)

  • @ルールづくりのために家族で事前に話し合っておく
     家族の中に、子どもに甘い祖父母や兄姉がいたりすると、親がきつく言ってもかばってしまう場合があります。子どもと話す前に、スマホを何時まで使っていいか、理想とする「落とし所」を親が決めておきます。それぞれ個別の事情があるので、塾からから帰ってくるのが9時だったら11時にしてもいいでしょう。ここでは仮に10時としておきます。
  • A日常生活の中で話しかける
     子どもに話すときは、「たまには一緒にケーキをつくらない?」「ドライブしようよ」など、普段の生活の中でさりげなく切り出しましょう。いろいろ話す中で、スマホの話にふれ、「親としては受験生なので勉強してほしい。ずっとスマホばかりしてるけど、あなた自身はどう思ってるの? 一緒に考えよう」という姿勢が大切です。
  • B毎日の使用時間は子どもに決定させる
     「9時にはスマホをやめてほしいんだけど」「えっ、現実的じゃない。11時にして」「じゃ、9時半」「10時半」「わかった。間をとって10時は?」「しょうがない。10時にする」と子どもに決めさせます。親が強制した10時ではなく、あくまで子どもが交渉の末に勝ち取った10時なので、子どもは確実に守ります。また、10時に電源を切ったあと、友人はどんな話をしているのか、気になって勉強に打ち込めないかもしれません。「寝る前10分だけ、居間でスマホを見てもいい。でも、見るだけで返信は翌朝」という不安解消のルールも効果的です。
  • C少し先のことにも触れる
     「それと、今すぐというのは難しいけど、たとえば夏休みになったらスマホは6時までとかはどう思う?」と段階的に短くしていくのもいいでしょう。彼らは未来の話なので落ち着いて考えられる。先に述べたように、実は心の中で「このままじゃいけない」「LINEしてる時間、もったいない」と思っている子は多い。「夏休みは受験勉強の天王山だから、6時でもいいか」と子ども自身に先を見据えたことも考えさせてみましょう。受験生となったばかりの4月は、親子の会話を持ちかける絶好の機会と捉えてください。

「鬼ババ、ガンコ親父、きしょい!」
(でも、助かった)

 ルール決めだけでなく、守れなかったときのペナルティもあわせて決めておきます。たとえば2週間とか1か月とか、ルールを破ったときはスマホ全面禁止など。これも交渉を経て子どもに勝ち取らせます。
 ただし、ルールとペナルティを決め、自分だけがLINEをやめても友人は皆やっている。一番いいのは、子ども自身が友人たちと話し合うこと。「受験生なんだから、こうしようよ」とか。それが無理なようなら、「お母さんは鬼ババ、お父さんはガンコ親父になって、あなたを守る。どんな協力でもする」という強い思い、姿勢を子どもに示しましょう。
 子どもは友人たちに「ごめんな。うちのオカン、まだ子離れできてへん。10時になったら無理やり電源切られる」「オヤジがメッチャ怒る」「ご飯のとき、スマホを使うと取り上げられる」とか自分の置かれている厳しい状況を話しておく。子どもは「今からご飯。ごめん、離脱する」と1回入れておく。「あの子、かわいそう」「ルールを破ると鬼ババにスマホ壊されるらしい」ということで、仲間はずれになってしまう可能性はかなり下がります。
 私が「きしょい!」と言われたように、友人に言い訳できる材料を子どもに渡してやる。親が悪者になってやる場合、どんな悪者になる設定がいいのかは子どもがわかっています。「ガンコ親父、鬼ババ」を演じて子どもの防波堤になる。それぐらいしないと、子どもはなかなかやめられません。ルールとペナルティを子どもに決めさせ、それを親がしっかりとサポートする。まずはそのための話し合いを始めてください。
 試されているのは子どもたちである前に、まずは私たち大人なのだと感じています。







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